「全区模型展示館」
台座に「永懐領袖」と記された蒋介石(蒋中正)の胸像を見ながら、現在「全区模型展示館」として開放されている建物へと向かいます。この無骨な建物はかつて「中正堂」と呼ばれ、警備総司令部の集会所として使われていました。旧「中正堂」の壁には、当時の思想教育の様子をコミカルに表現したイラストが描かれているのですが、訓導している教官の顔は、ひらがなの「へのへのもへじ」になっているのがユニークです。特定の人の顔を想像させずに人物を描くには、日本の「へのへのもへじ」が都合良かったのかもしれません。誰でも思想教育の被害者となるばかりでなく、特定の思想を上から押し付ける加害者的な立場にもなりうることを示唆しているようです。エントランスには収容者をイメージした立体像が立っています。像をあえてモノトーンにしたことに、(へのへのもへじ)と同じような深い意味が感じられます。
台湾 台東 緑島に渡る(13)