「島の東海岸」
「緑島人権文化園区」エリアを抜け、坂道を登って島の東海岸へと向かいます。東側の海岸を臨む丘の上を走っていると、突如として赤い楼門が現れました。門には「観音洞」と記されています。ということは、観音様が祀られている鍾乳洞なのでしょうか。門を潜って通路を進んでゆくと、予想通り鍾乳洞へ入る階段が奥へと続いています。階段を下った先には、(のっぺらぼう)の石筍と思しきものが屹立しており、そこには「観音菩薩聖尊」という看板が立てられていました。このツルンとした石筍が御本尊です。天然の鍾乳洞とはいえ、中華圏ですから紅色の装飾で派手やかに彩られており、洞内にはお線香の煙が漂っていました。この鍾乳洞には魚卵のような形状をした石灰岩があり、台湾では非常に珍しいのだそうです、観音洞から「環島公路」をちょっと南下すると、海岸へ下る脇道が逸れていたので、ジグザグの急坂を下りきったところで舗装路が尽き、岩礁と断崖の間に挟まれた小さな平坦地へ歩道が伸びています、歩道のまわりには屋根からゴロゴロと崩れ落ちた複数の廃墟が無残な姿を晒しており、幽霊の1体や2体が現れても不思議ではないような光景が広がっています。この海岸は柚子湖という集落で、島にある集落の中でも古くから生活が営まれており台東県の観光パンフレットによれば、珊瑚礁岩で作られた伝統的な民家がこの集落の特徴的な光景です、印象ではその特徴はことごとく廃墟と化しており、夕方に近づくにつれて太陽が早々に断崖の向こう側(山側)へ姿を消してしまうため、島の東に面しているこの海岸は早々に影に覆われて暗くなり、ますます不気味に感じられます。海岸自体は大変美しいので、集落跡地が太陽で明るく照らされる時間帯に訪れたら、また違った印象を抱けるのかもしれません。少なくとも陰って薄暗くなった柚子湖に限って言えば、太陽が燦々と輝いている時間帯に訪ねるべきだと断言してよいでしょう。歩道から波打ち際に出てサンゴ礁岩の磯を歩いていると、足元のあちこちにサンゴの跡を発見しました。さきほど訪れた観音洞の石灰岩は、こうした岩が陸地化し、地下水や風雨によって溶かさることによって出来上がったのでしょう。
台湾 台東 緑島に渡る(17)