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民主独立国家 中華民国(台湾)

台湾で来年1月に行われる総統選で再選を目指す与党、民主進歩党の蔡英文(さい・えいぶん)総統が、これまで口にすることを避けてきた「中華民国」という台湾当局の公称に言及する場面が増えている。蔡氏が「中華民国」という名称を避けてきたのは、民進党の伝統的な支持層である「台湾独立」派に、蒋介石政権による弾圧の記憶が根強い「中華民国」体制への反感があるためだ。それがここにきて中間層や野党、中国国民党の支持層をも念頭にウイングを広げる戦術に転換し、支持者の切り崩しに対し国民党は警戒している。

 「2300万人が台湾でともに暮らし、主権があり政府があり、民主的で自由な(政治・社会)制度があり、自国を自ら防衛し、外交がある。これが私のいう中華民国台湾だ」

民進党支持者の中には国民党の党章をあしらった「国旗」や、もともとは同党の党歌だった「国歌」を認めない人も多い。蔡氏は今年10月10日の「建国記念日」に相当する「双十節」の演説で「中華民国」に何度も言及した。

第二次世界大戦での敗戦によって台湾に対する日本の主権は失われたが、台湾や澎湖諸島を中国(中華民国)への返還を求めたカイロ宣言については国際条約ではなく、また「台湾は中華民国の実効支配下にあった」としている。 そもそも49年に成立した中華人民共和国政府が台湾への統治権を持たないことは周知である。

2000年に下野した中国国民党は、中国大陸と台湾との分断を恒久的に固定化する「台湾独立」に反対するという点で中国共産党と一致した1992年の中台間の協議で双方が「一つの中国」を認め、05年には連戦(れん・せん)名誉主席が中国の胡錦涛国家主席(中国共産党総書記)との間で、「92年合意の基礎の上に、両岸(中台)対話の回復を促進する」とする「国共合作」に踏み切っている。蒋介石政権による弾圧の記憶を消し去ったのは、民意に沿った「国共合作」であっただろうか疑問が残る。また中国国民党は、民進党政権が続けば「中華民国は消滅する」としていたが、民主進歩党の蔡英文(さい・えいぶん)総統は、中国共産党と距離をおきながら、中台関係の「現状維持」を掲げ、台湾が主導権を維持する民主独立国家を模索している。

 

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